彼女は帰ってきた。
どうして帰ってきたのかとか、何があったのかとか、そういうことは気にならなかった。
これから、どう接していけば良いのかは、とても知りたかった。
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彼女が出て行ったのは一年前。
たばこが増えたり減ったり、酒に呑まれたりもしなかったけど、自分を取り巻くリズムがどんどん単調になっていくのが分かった。
仕事は自然とはかどった。一つ一つを大切にしないで、平等に時間を割り振ってこなせれば、こんなにも簡単なのかと、社会人3年目にして初めて気付いた。
食べるものは固定されてきた。ローテーションで食事に迷うこともなくて、たまに自分の食べたいものを身体の希望だからと、食べてあげる。
新しい映画を見に行くことが無くなった。気になるものはある。でも、劇場まではとても行けないし、レンタルするのも、どうも億劫だ。
音楽は昔聞いていた曲を聞いている。それもリピートで。去年のこの季節も、たぶん同じ曲を聞いていたんだと思う。悪くない。
でも、彼女が帰ってきてから、曲を探し続けている。ランダムで選ばれる曲がどれも、今しっくりと合う気がしなくて、飛ばし続けている。いい加減、イヤホンを外せば良いのに。
たぶん、これから先、あまり良い事は無いと思う。それは、ボクが期待も悲観もしなくて、苦しくない代わりに嬉しくないからだと思う。
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彼女は、どう思うだろうか。