夏は続く。

 新しい服を買って新しい音楽を聴く。
 そうやって自分を刷新していく。更新していく。アップデート。その繰り返しを、昔は太陽の光を感じながら、ただその光だけで感じ取れていた。
 夜明けの目覚めにわくわくして、朝の静けさに違う世界を見て。いつもと違う時間帯の街の通りには、ランニングをする近所のおじいさん、息の荒い小型犬を連れたお兄さん。明け方のコンビニの店員は眠そうに何処か一点をぼうっと見つめて、朝日の射し込む広々とした駐車場には秋の訪れを感じさせる落ち葉が散らばる。
 そんな記憶。むかしの思い出。あの朝には私は、生まれ変わるということがどういうことか、新しく始めるということがどういうことなのかを、少しだけ分かった気がした。

 夜が若者の時間だというなら、朝は健やかな大人達の時間だ。
 多くの物が出て来ては消え、出来上がっては壊れていく中で、残っていくものというのはきっと、いつもの朝の風景にあるものなのだろう。
 そうして夏は続く。