巨人の大きな愛情

 ボクは、街を壊して回った。
 ボクは、とても大きいことを知っている。自分の身体がきみやあなたと比べて、とても大きいことを、知っている。例えば、君が家の屋根についている風見鶏だとするならば、ボクは君の家や街を見渡す灯台の丘、くらいにある。多くの人はボクを恐がり、ニヤニヤとしながらおべっかを使う。ボクはそれをとても息苦しく思う。
 ボクは、ある日気付いてしまった。薬指と小指の差くらいしか無い、小さな小さなきみを、ボクは一目見て同じナニカなのだと、気付いてしまった。一つとして見える部分は同じではないけれど、きみが感じている身の回りのものへの気持ちを、ボクは持っている。ただそれは、きみが言葉にすればそよ風を届け、ボクなら嵐を呼び込む、それだけの違いなのだと。
 
 だから、どうか怖がらないで欲しい。ボクがいつも晴れた日に眺める牛小屋や、一度可愛らしいコスモスを摘んでくれた姉妹の住む家や、遠くから祈りを捧げる古い教会や、その他のものを次々と壊して回るのは、きみと何も変わらないのだよ。
 きみは、真実や、愛や、本当の気持ち、とかを信じるかい? ボクは信じているよ、そして、たまに確かめたりもするんだ。きみだってするだろう、頭の中と心の中で。ボクはこの掌の中で、確かめたりするんだよ。