うそをつく

 嘘をつくのは、それが必要だからであって、それ以上でも、それ以下でもない。
 いつからか嘘は身近に置いてあった。量や器の嘘。誇張とも演出とも言いがたい、印象の嘘。
 いつからか嘘は本当を浸食して、私の周囲に薄い膜を張るようになった。それはとても薄くて、無味無臭で透明で、誰も傷つけない代わりに誰も寄せ付けない。お互いに心地よい感触からは、その邪悪さはたちまち消し去られてしまう。感謝されることは多分にあっても、こちらからすることは無い。だって、うそだもん。
 嘘つきが泥棒の始まりだと言うのなら、私は何を盗むのか?