わが星
「わが星」を読み終える。
- 作者: 柴幸男
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2010/04
- メディア: 単行本
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地球の誕生から消滅までをめぐる物語が、団地にくらす少女の日常にかさなりあう、現代口語ブレイクビーツ・ミュージカル。
第54回岸田國士戯曲賞受賞作品。
http://www.mamagoto.org/
すばらしー!
とても抽象的。人によっては、無味無臭に感じるだろう。あまりに透き通っていて、触れていたく無いとまで思うかもしれない。けれど、「わが星」はそれでも、すーっと染み込んでくる。
これは、ある家族の物語。わたし(ちーちゃん)は、自分の生まれてから死んでいくまでを、家族と月ちゃんと、もうひとりのとても大切な人と、人生の間にある出会いや別れや、あらゆる出来事を通して、私たちに見せてくれる。
ただ、小さい女の子である「わたし(ちーちゃん)」とは、この星、つまり地球が、身体と心を持った姿なのです。
時間
空間
希望
失望
声
聞こえない
命
あたし達
ハッピーバースデートゥーミー!
宇宙が何も無くて、まさしく無であって、でも無だけは有った頃から、物語は始まります。
00:00:00 宇宙はこうして生まれました。
時が流れ始めると同時に、様々なものが次々と生まれ始めます。
「声が聞こえること」「お姉ちゃんにぶたれたこと」「引っ越したこと」
「みんなでちゃぶ台を囲んだこと」「思い出すこと」「夢をみること」……
リズムよく、言葉が繰り返され、少しずつ形を変え、また繰り返され、宇宙と「わたし」の世界が立ち上がってきます。
きっと、宇宙はこうして生まれたんだね。
……ねえ、
なに?
これ、あたしが死んでくとき?
そう
うん、おぼえてる
ずっと見てたんだ
見えてた、燃えるんでしょ
燃えるよ
消えるんでしょ
消えるよ
ねえ
なに
……手つないでもいい?
星が生まれて死んでいくことを、私たちの誰一人として外から眺めることは出来なくて、けれど、それが確かにあることは知っている。自分がいつか死んでしまうことも、自分の大切な人がいつか死んでしまうことも。それと同じように、私が生まれてきた日のことを、それを見守っていてくれた人たちのことを、愛しい家族のことを知っている。いや、知っているというのは嘘かも。想像でしかないから。けれど、それが想像だとしても、物語だとしても、その重みは変わらない。死を、生を、ありがとうを、さようならを、抱きしめて抱えていたいと思うのは、とても正直な気持ちだから。
誕生日おめでとう!
ありがとうございます。面白かったです。