クリエイターのいる場所。

 クリエイターってなんだ。
 ネット上に幾つもあるうちの一つ、写真を仕事にしている人のサイトを見て、なんとなくその意味が分からなくなった。写真を仕事にしているだけあって、もちろん写真が沢山そのサイトには載っていて、それらを簡単に見ることができて。その人の撮った写真はクリックすると次々と切り替わる。次の写真が出てくる。私はどんどんクリックする。カチカチ。そうして全て見終えてしまった。そこに感動は無かった。そこに躊躇も迷いも無かった。ただ、見終えた。でも、どんな形であれ、全部見たのも事実だ。最初から最後まで、全部。それはそれですごいことなのかもしれない、全てを見終えさせる、というのは。途中で飽きて止めても良かったのに。でも感動は無かった。はっきり書いてしまうけれど、そこに感動は無かった。

 舞台を見た。また舞台だ。今年は舞台を観に行くことが多いなぁ。今回のも、面白かった。今はまだ、やっぱり「舞台」という世界というか、「演劇」というアトラクションが珍しく感じているような所があって、だからこうしてすぐに「面白い」だの「泣いた」だの言っているのかもしれない。なまじ詳しくなってしまった映画やドラマではそこまで感情移入できない。なんというか粗ばかり見えて、すぐに失望が顔を出す。だからこそ、とても面白いものはたまらなく面白いのだけど、なんというか、それはなかなか巡って来ない流れ星みたいなものだ。そんな風に冷めた自分もいる一方で、今回は泣いた。素直に泣いた。アップダウンが激しくて変な感想だとは思うけど、だって、素直に面白かったんだもの。
 観に行ったのは「ラフカット2009」。新宿にある、スペース・ゼロというホールで行われた。作者の違う四つの演劇をそれぞれ30分くらいで上演する。全てのキャストがオーディションから選ばれる。もう15回目。つまり15周年。このイベントは役者の為の修行の場であり、出会いの場であり、それらを互いに共感する機会なんだなと思った。もうそういう雰囲気だけで、私は嬉しくてたまらない。そこに関わる人、応援する人、熱意、それぞれの成長と今後の未来を勝手に想像する。長い人生の中で、この瞬間にしか立ち会えない人々の、一つに集まった情熱を観ることができたのだ。その声を聞いたのだ。なんと素晴らしい。
 そう、たぶんこの臨場感、リアルタイムで進行する芝居、一回きりの感覚が、たまらなく心に響くのだろうなぁと思う。
 もちろん演劇自体もよくできていて面白かった。気持ちのこもった芝居というか、密度の濃い空気が会場につまっていて、舞台から観客席までそれがむき出しに溢れ出ていた。早口になるところもあった。緊張なのかもしれない。よく聞き取れないところもあった。ミスももちろんあった。けれど、そんなところよりも眼を惹き付ける覇気のようなものがそれぞれの役者にあって、それに心臓と感情を握られているから、気にならない。終わった後の拍手が自然にできた。もちろんアンケートにも答えた。
 この世の「善」とは何か?と問われたら、おそらくそれは人の一生懸命さだと、私は思う。「幸福」も同じだと思う。そこに宿るのだろう。

 クリエイターとはなんだろう。誰に望まれるでも無く、それを作ってみたり、壊してみたり。
 全ての、日常を生きるクリエイター達のことを思う。

 ある日、創ることを止めようと、決意する。
 もう二度と、戻ってくるものかと、覚悟する。回り道をしてみる。ふらふら歩き続ける。好きでもない仕事をしたりする。多くの人のまねをしたり、なんとなくぼんやりと過ごして考えないように眠る。眠る。眠ると本当に眠り続けそうになる。永遠に。そうしている内に飽きてしまって、再び外へ出る。出会った人や風景のことを考える。話す。話してみると楽しい。もっと知りたい。知って欲しい。そうして誰かを好きになってみたりする。すると大事な人が出来て安心する。その安心が、自分の中にある大事なものを眠りから起こす。大事なものは無くなってなんか居ない。少し席を外してたんだよ、ってすぐ戻ってくる。冬の空の空気が懐かしい。思い出す。思い出す。そうして少しずつ、想いを言葉にしたりイメージが浮かんできたりして、そうしてやっぱり好きなんだなと思う。側にいる大事な人のことを想う。どちらも同じくらい大事だと思う。それを嬉しく思う。どっちも大事だ。そりゃそうだ、なんで当たり前のことを嬉しく思うんだろーねーと、笑う。笑う。笑う。
 自分が笑顔になって、誰かも笑顔になって。
 そうしてまた、何かを創り始めたりする。

 全ての人は、何処かの途中なのかもしれない。そうしてその道を、繰り返すのかもしれない。
 継続する絶対的な成功は無い。だから、壊しては創る、それを繰り返す。
 上手くいかないことは、上手くいく為の伏線。下準備。失敗は成功のマザーってルーさんも言うのだろう。
 次に観る頃、あの写真家のサイトは、随分と面白い写真で満ちあふれているかもしれない。
 クリエイターは、そんな周回軌道を回る流れ星かもしれない。


 上手くは無いけど、悪く無いこと、言えたと思う。ではまたー。