キサラギ

 キサラギ観た。
 小栗旬氏よりも香川照之さんに眼が向かう……オヤジ好きなのか私は。でもかっこいいんだー。
 口元の無精髭とか、急に出す大きな声の響く感じとか……たまりません。「ゆれる」でもオダギリジョー氏より香川さん観てたしな……カイジの予告で言う「勝たなきゃゴミだ!」とかグッときます。なんかもう清々しい。気持ち良いんだ。それはたぶん、キツく発声しても声質が乱暴にならんくて、それでいて芯が力強くて何度も聞きたくなる声だからだと思う。すげーあの声好きだー。

キサラギ スタンダード・エディション [DVD]

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 あらすじ。

 某ビルのペントハウスに、互いに面識のない五人の男たち(ハンドルネーム:家元、オダ・ユージ、スネーク、安男、いちご娘)が集まった。彼らはD級マイナーアイドル・如月ミキのファンサイトを通じて知り合い、如月ミキの一周忌の為に集まったのだった。
 一年前にマネージャーの留守番電話に遺言メッセージを残し、自宅マンションに油を撒いて焼身自殺した彼女を悼むのが会合の趣旨だったが、オダ・ユージが彼女の死因は自殺ではなく「他殺だ」と言い出したことで状況は一変する。
 徐々に明らかになる当時の状況、次々と明かされる五人の男達の正体。如月ミキの死の真相に迫ろうとする男たちが繰り広げる紆余曲折を経て、彼らはある真実へと辿り着く。

 内容はと言うと、まぁあらすじ通りですね。ただ、深刻なサスペンスやミステリーを期待すると、私みたいに筋道に迷いそうになるかもしれません。
 前半30分まではそれぞれのキャラクターを描く時間。名前と顔を一致させたり、口調から性格を感じ取ったり。やっぱり舞台っぽいなぁーと思って観てました。上手く語れませんが、魅せ方が映画的では無いです。まぁそうだよね。しかしそんな中に後半の伏線が多く貼られていて、覚えていないと観始めて一時間を越えてからの展開にドキドキできません。その辺りは自然にアイテムが忍ばせてあるというか、抜け目無く書かれている感じがします。静かに毒と薬をもられているみたい。こっちとしてはお酒呑んでだらだらしてるだけって感じなのに。
 ユースケ・サンタマリア氏が推理を始めてから空気がガラッと変わる。そこで物語が一段下へ潜り始める感じ。キャラクターへの感情移入よりも、好奇心が物語を追い続けさせていたように思います。どうして自殺じゃないと言えるんだろう……?と興味をそそられる切り返し。最初は単なるファンの行き過ぎたコレクションだった「如月ミキ全記録集」が、自殺を疑い始めてから一気に「推理の為の資料」へ変わるとか、おぉってなりました。

 シリアスなサスペンスにありがちの、大きなひっくり返しは無いものの、残り30分を過ぎてからの「事件の真相」を塗り替え続ける流れは面白いなぁと思いました。そんでもって優しい。気持ちよかった。ゾクゾクとしました。自殺から他殺、他殺から偶然の連鎖による事故死、事故死はおっちょこちょいだから、ってなって、でも本当に死んでしまった理由は大切なものを守ろうとしたから……。彼女はアイドルとして幸せだったんだろうね……と素直に感情を乗せていくことが出来て、とても面白く観させてもらいました。シンプルだけど、組み立てられた世界に入り込む楽しさというか、それを眺める美しさというか。理知的。言葉が合っているかは知りませんけど、つまりはロジカルです。
 「伏線の回収の気持ちよさ」に魅力を発揮する物語。そして個人的には香川さん良いねぇと思う映画。
 ありがとうございました。面白かったです。