私なりの「こうふく」を探して。

 アメリを今更ながらに観た!

アメリ [DVD]

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 ものすっごく良い映画やないの!好みの物語要素をあらゆる方向から刺激してくれるわ。なんで早く観なかったんだろう、惜しいことしてたわー。
 世間(映画の外の、現実の世界)から見ると、一見不思議なキャラクター。けれどそれを映画を通して、生い立ち、家族関係、好きな事嫌いな事、大切にしているもの、過去の出来事から未来の自分へと、丁寧に語りかけるタイプの物語が大好きです。
 「フォレストガンプ」もそうだし、小説だと「ガープの世界」もかなり良かった。一人の人生を追う空想的伝記というのかな。専門的な呼び方は分からないんだけれど、現実の出来事が絡んでくるとがぜん面白く感じます。
 きっとこの手のフィクションを成り立たせる文法に、現実との繋がりを演出する為に時代設定や時代と人物(アメリアメリの住む町や住人達)との関係性を示す、みたいなのがあるんだと思う。だから大抵このタイプの物語は、主人公が生まれた日や主人公に特別な出来事が起きた日の、現実世界で起きた出来事を一緒に描写する。現にアメリが「思い出の小箱」を見つけるのは、ダイアナ妃が亡くなったニュースを観たからだ。現実感を匂わせると、フィクションはより輪郭をはっきりと持つことが出来るようだ。それを受けて、観客は物語へより深く導かれる。

 ごく普通に街にあふれている出来事や、人の行動を、あるキャラクター(アメリ)からの視点で再構築する。アメリは空想が好きで、想像の中から世界と関わって生きている。良く言えば人生や人間関係に歪んでいない娘、悪く言えば現実と向き合っていない娘。この物語はそんな空想世界に住むアメリを否定したり、そう育てた親や社会や境遇を悪とする訳ではなくて、それはそれ、彼女なりの「現在」としていったん成り立たせる。それに、妄想が続いていく世界が幸せなのか、シビアに生きていく世界が真実なのか……なんてことはいらない。ただひとつ、
 アメリは思う。私なりの「こうふく」は、好きな人に向き合う「勇気」にあるんじゃないか。
 だからラストで彼女は玄関のドアを開ける。それを観ている側は、空想を抜けて現実へと歩み出した姿と考えても良いし、アメリが「こうふく」を今まで持っていた幸福達の中に新しく加えたと考えても良いと思う。私は後者だと思いました。アメリが何かを代償にしたとは、思えなかった。

 何がしあわせだろうかと、作り手は、アメリのことを考えていた。だから私も観ながら考えた。それがとても幸福な時間でした。