the L word/Lの世界

 Lの世界を見る。
 DVD第一巻を鑑賞した感想。不安定だ、と思った。
 思っていたより、テーマや題材の過激さやエロスに引っ張られすぎず、後半のとあるシーンでの会話がこのストーリーの肝になると分かり、最後まで見ることができた。愛とは、それぞれの違いに架かる橋なんだな。

 同性愛や両性愛、という題材に踏み込んでいく作品を見る時、いつも気になるのは、制作者がどちらか?ということだ。ゲイなのかストレートなのか、視点がどちらにあって、その視点は狙いをつけて定められたものなのか、それが気になる。もちろんその中間も存在するのだけれど、雰囲気を保つ必要がある物語は、狙って視点を定めている場合が多い。登場人物達の職業やファッション、髪形、ひとりひとりに個性を与えているのはどんな要素か、それらが世界に溢れる「男性的なもの」達とどう関わっているのか。実際第一話を見終えてみて、タイトル通りに「世界」を覗き見る感覚が出てきたのだけれど、それには制作者の演出力が強く影響しているように思えた。

 彼氏が大学の水泳部のコーチという設定、スポーツカーについて「マッチョな車」と表現すること、スーパーでアルバイトをしている姿を「エプロンが似合う」と表現すること、上下反対に撮られた女性二人のベッドシーン、女性の裸のシーンの多くが女性の胸を小さく見せるよう撮られていること、男性がタンクトップを多く着用していること……考え過ぎと言われればそうかもしれないけれど、何かを暗示しているように思える。おそらく、それがこの作品が「Lの世界」である印象を強くしているのだと思う。

 第一話は入り口として、やはりストレートの視点に沿っていると思う。しかし、ドラマが続いていく内にゲイの視点にスライドしていくのか、ストレートもゲイも悩める不安定な人間は同じだ、という主張へ進むのかは、まだ分からない。つまりは「人は違う」のか「けれども人は同じ」なのか、の方向性の違いなのだけれど、できればゲイの視点へスライドしていって欲しいなぁと……この作品は共感でき過ぎても面白くないような気がする。

 この物語の「人間の不安定さ」というのは、何かが欠けて空いた穴で不安定になるのでは無く、成長と共にどんどん不安定に揺れていく振動の振り幅のようなものだ。それを「新しい相手」で埋めようとしたり、「子ども」で繋ぎ止めようとしたり、なんとかもがいて安定へと進めないかどうかと人生の短い時期を生きているが、それらの全ての行動をどこかでもう一人の自分が冷めた視線や諦めた視線で眺めている。希望を捨てないでいられる、動的な不安定さ。それが物語を誘発する装置になっているのだと思った。

 簡単に総評すると、面白いが少々もたれる。そしてやはり、題材の扱いが表面的なのでは?と思う部分も幾つかある。もっと現実的で濃厚な魅力的な「世界」は、決して好奇心だけでは覗けたりしないものだから。