弟はどこへいった。

 しんしん小雪の降る夜に、弟、何処へ行ったのか。
 三度月が巡ったように、長い長い冬の夜。弟はその足、深雪埋めて、きつねに会いにいきました。
 きつねは弟出迎えて、干した魚と大根と、味噌を煮込んで鍋にした。
 そしたらたぬきもやってきて、一緒に食べよう、語らおう。
 弟楽しく親父の話、きつねもたぬきも聞き耳立てて、鍋は煮えていきました。
 五度目の月が巡るころ、弟そろそろ帰ります、きつねとたぬきは呼び止める。
 まだまだ帰るな、鍋まだ煮えぬ、弟困ってもう少しここに。
 その時小屋を叩く音。荒々しくて大きな音。きつねとたぬきは顔見合わせる。
 入ってきたのは弟の親父。手には猟銃たずさえて、二匹の獣に狙いをつける。
 ドーンと一発、バーンと二発、獣は囲炉裏へ仲良く落ちて、こぼれた煮汁がぶっかかる。
 弟、親父に連れられて、家へと帰っていきました。

 弟、今でも、思い出す。冬の季節に思い出す。
 きつねの鍋の良い匂い。たぬきのけたけた笑う声。