ガープの世界をやっと読み終えた。
作家が描く、作家の人生。
男と女と性と暴力、ユーモアと悲劇と喜劇。キャプテン・エネルギー。同じく物を書く人間として共感できる所が本文中に幾つもあり、読みながら何度も感心してしまった。
作家が扱うテーマに違いは無い。あるとすれば、それを扱う知性と洗練度だ。
全くその通りのような気がするし、されど新たなテーマが日々産まれたり燻ったりしている気もする。我々の悩みや葛藤はもう、明らかにされてしまったのだろうか。我々の未知のテーマは、もう、想像の中だけなのだろうか。
昨今、物語を創造するにあたりキャラクターの重要性が取り上げられている。職業、年令、性別、所得、障害などなど、個人から始まるストーリーが、物語を大きく動かす原動力になっている。どうやら今の流行りらしい。正直、この流れが嫌いだ。
個人がどうあろうと、心や精神がどうあろうと、世界や世間や一般大衆と呼ばれるようなものが外側には常にある。私たちは否応なくその影響を受け、また影響を広げている。それはどの世界にすむどの登場人物達でも同じだ。全ての人物達は関連し合い、作者の手も届かないような関係の糸を紡ぐ。故に、どの物語の世界も個人からのアウトプットのみでは成り立たない。限りなくそれに近い状態は存在するにしても。
僕らが物語を楽しむのは、他人を理解したいからだ。想像の世界で、相手と近づき、理解し、受け入れたいからだ。だから、その世界を一人の、しかも人間という限られた視点でしか見ないのはもったいない。世界はどう動いているのか、その視点に力を注いで欲しい。
映画もテレビも小説も、内にこもりがちなメディアだからこそ、外の世界での体験と同等の知識と経験を提供しようじゃないか。だから、キャラクターに偏らないで欲しい。世界を面白く、魅力的にしようよ。
そのように、すこし訴えかけたくなったのだ。
ガープの世界は、プロットの面白さで、私をわくわくさせてくれた。そして、大事なことを教えてくれた。
「どうして読むのかって? そりゃ、次にどうなるのか、知りたいからだよ」
- 作者: ジョンアーヴィング,筒井正明
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