傘を買った。コンビニのビニール傘。

 過去最高というくらいの金欠状態なので、残りのお金を想像しつつ、でも深夜だし雨降ってるし使わない訳にはいくまい!と結構簡単に買った。サイズの違う傘が幾つかあって、それぞれちゃんと見ると確かに大きさが違うようだ。60センチのを買った。

 これまでは電車でうとうとしてしまい、車内に忘れてしまうことも何度かあったが、まぁ仕方あるまいと、また買えば良いだろうと思っていた。もちろん今も忘れたら仕方ないと思うのだけど。でも違うのは「買う」時なのだと思う。大切にしようとか、丁寧に使おうとか、ふと考えている自分に気付いた。なんだか懐かしい気持ちだった。

 たぶん最初に似たような気持ちになったのは、初めてスニーカーを選んだ時だと思う。小学校の頃だったろうか。それまで履いていたちょっと幼めな靴がなんとなく嫌になってきて、黒いスニーカーを買ってもらった。とても嬉しかった。嬉しくて明日になったら出歩く道を想像して布団に入った。わくわくして少し眠れなかった。

 今はそのスニーカーは小さくて履けないし、校庭でサッカーをしていて穴があいてしまったので見た目も良く無いが、たぶん実家の靴箱の何処かに入っているはず。靴を捨てるのって、なんだか寂しい気持ちになってしまうんだよね。だから。

 私は嘘つきだから、たぶんコンビニのビニール傘を大切にしない日がくると思う。それもおそらく早く。でもこうして言葉にしておけば大切にしたことは思い出せる。そうだったなぁ……と思い出して、その時身の回りにあるものに眼を向けると思う。その繰り返しを止めないことでしか、私には何かを大切にすることができない。これは悪いことかもしれない。でも、忘れている時が無いと、私は悲しくて雨の日に出歩きたく無くなってしまう。それは傘を大切にすることとは違うと思う。

 言い訳かもね。とりあえず出来るだけ大切にします。