水の戯れ
読み終えました。
- 作者: 岩松了
- 出版社/メーカー: ポット出版
- 発売日: 2000/05/01
- メディア: 単行本
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現実を切り取ったほど乱暴ではなくて、物語る材料の言葉を言わされてるようでもなくて。物語の進行するスピードと人物の呼吸と会話の流れ方が自然にイメージできていく。浮かんでいく。
失ってしまった人間関係を思い出すことがあるだろうか。
例えば、幼い時の友人。進学、卒業、クラスが変わり席が変わり、なんとなくつるむ「アイツら」も、一緒に帰る「みんな」も変わって、なんとなく疎遠になる人達。どちらかが嫌いになったとか、特別な感情も無くて、時間が合わなくなって、今はもう側に居ない人達。
例えば、死んでしまった家族。
自殺は、私と家族の中心に、大きな穴を開けた。その穴は見えなくて、でも普段は何も無いのと同じだから、なんとも無いんだ。誰も語り出したりしないし、誰も答えなんて知らない事だから。
でも私はそれを抱えているのを、ちゃんと知ってる。今日はお疲れって乾杯してても、つまらなすぎる冗談にクスッと笑っても、穴が開いている。どうして、いないんだろう。
分からないものを抱えて、でも、人を好きで。ここにある愛情がたとえ、大きな穴を埋めようとしても、私は人を好きになる。
純粋なものなんて無いと、その時は自分を許すのかもしれない。誰かを愛するのは、結局は自分本位なものだと。元からそうだったんだと。だから、これは愛なんだと。
まだ諦めるとも、認めるとも決めていないけれど、未来には待ち構えている疑問なんだな。「水の戯れ」は、私に立ち位置を探させる。大きな穴を避けては通れないのだよ、と。
面白かったです。