一番のことばを選んで
今日は部屋の蛍光灯を替えた。
昨晩読みたい本があったのだけれど、チカチカ点滅するばかりで、光が安定しなかったから。台所の電気を点けて結局読んでいたのだけど、今朝目覚めてやっぱり買いに行こうと思った。
自分が今まで一度も電球や蛍光灯を替えたことが無いのに驚く。バイト先の照明はよく替えていたけれど、小さなハロゲン灯や長い蛍光灯とかで、丸いタイプは初めてだった。
家でメモした品番なのかワット数なのか分からない文字列を見つつ、おそらく当たっているだろう一つを選ぶ。
家の電気が点かなくなったら、取り替える。当たり前の事。住み続けていれば、いつか何処かの調子が悪くなる。人間だって一緒だ。
何か一つミスをしてしまうことは、とてもとてもよくあることだ。自分の何処を直せば、次のミスが起きにくくなるのだろうか。それを考え続ける毎日。二度とミスを起こさないなんてのは、誓いであって、保証は何処にもない。だから、誰かの失敗を責めるつもりにはなれない。それは自分の姿に見えてしまうし、たぶん私たちにできるのは、誰かを罰することでも許すことでもないはずだ。
できることは、その事実を一緒に受け入れることなのだろう。
私は蛍光灯の替え方を知って、また一つ自分のことを自分で出来るようになった。
失敗してしまったと評価されて、それを乗り越えようとしている人がいる。
私たちは同じなんじゃないか。
人生は蛍光灯の交換、ではないのだけれど、その中に見出すことが出来る。つまりは、相似形のように大きさは違うかもしれないけど、形が似ているということ。そう思う。そう思うんだよ、今は。
どうして泣きながら、今までありがとうございましたって言うあの人に、私は笑顔でいることしか出来なかったんだろう。どうしてその場で一番の言葉を選んで、伝えて上げられなかったんだろう。どうして、黙って見送ってしまったんだろう。
手を握るのが正解だとか、借りっ放しのものを返すだとか、今度一緒に呑みに行きましょうとか、私には選択肢がいくつもあったはずなのに。私があの時選べたのは、一緒に泣いてあげるより、笑っていることだったんだ。
これはひとつの事実。これからも幾つも続いていく事実の一つ。だからお互い笑ってみても良いんじゃないか、とか思ったんだよ。
涙を見ているのが、辛かったんだよ。
今までありがとうございました。いつか、このことを、書いてみようと思います。去っていくあなたのこと、それから先のあなたの人生を考えながら。