出会いと別れを、100個作りなさい。

 「彼女でも作りな!男とばっか遊んでないでさぁ」


 頻繁に呑んだり遊んだりする友人に、ついメールで送ってしまった。「つい」って言葉で濁してみたが、メールなので何度か見直したり確認したりしてから送ったわけなんだけど。全然「つい」じゃないじゃん。本当はそんなこと言うべきじゃないと思っているのに、思いついてしまったことは口に出さずにはいられない時がある。たまには後先考えずに言葉にするのが当たっていたりするけれど、それって上手い人の場合、結構無意識に狙った上で言っている気がする。今回は、悪い事したような気持ちになったから、たぶんはずれ。


 具体的に「彼女を作る」ってことは、どうすりゃ良いんだろう。たぶんだけど、恋愛経験ほんとに少ないけど、そんな具体案なんて無いのだと思う。でも頭の何処かで、そう否定することで悩んだり苦しんだりすりゃ出てくるはずの結論を避けてるんじゃないかとも思う。


 以前、脚本家の先生にゼミみたいな形で教えて頂いたことがあって、その時先生は、「後に愛し合う二人が出会う状況と、二人が別れるきっかけとなる状況を、100個作りなさい」と言った。せっせせっせと考えたけど、翌週に先生と会うまでに10個も出なかった。中には無理して「1個」とカウントしたのも入っていて、今思うとそのばかばかしさに自分の恋愛経験の浅さを思い知らされるようで、シャワーを浴びながら「あー!!」とか言いたくなる。バレたら死ぬ。先生は別にそれを宿題にしてた訳じゃなかったらしく、結局発表して死なずに済んだ。


 今思うと先生の言ったことって、いろんな意味が入っていたような気がする。100個も出ないのは想像力や経験値不足だと言うこと、宿題のような気がしていた自分は、何処かでその「出会いや分かれの状況」に「答え」や「正しさ」があるように考えていたこと、本当はどんなにつまらない状況やみっともない姿を最初に見られたとしても、何かの形で記憶に残れば恋愛に発展する可能性があること、それっていつも生活している中に、分からないようにひっそりとあるんだということ。


 先生がどんなつもりで教えてくださったのか、本当の所は分かりません。