「西洋骨董洋菓子店」

 読み終えたよー。

西洋骨董洋菓子店 (1) (ウィングス・コミックス)

西洋骨董洋菓子店 (1) (ウィングス・コミックス)

 面白かった……これでまだ一巻だから、楽しみ過ぎる。
 セリフが良いんだなぁと思っていたのだけれど、きっと、その前後の間と、表情と、コマの大きさとその中で何も描かれていない空間のバランス、みたいなものが、セリフの良さを引き出しているんだなぁ。あとやっぱこの人(よしながさん)の考え方好きだわ。それがでかい。人の見方と言うか。読まされてる感じがしない。
 なんだろうこの、第三の、四の、選択肢を見せられてる感じがたまらない。私が何言ってるか分かりにくいでしょうけど……
 つまり、物事の価値観には、「主流」みたいな「大多数」みたいな、よく「普通こうでしょ?」みたいに言われているものがあるんです。「常識」とか「一般論」とか言い換えても良い。これが第一の選択肢。友情とか愛情とか真実とか正義とか平和とか、そういう類いの。清く正しいこと。
 そしてそれの裏側みたいに寄り添っているのが、対偶の価値観。これが第二の選択肢。シニカルで、裏切り、復讐、優越感と劣等感と、本当の友達って何?、とかとか。主流の価値観を否定することで、誘発されて生まれてくる価値観。「いつだって世界は平和なんかじゃない」みたいな。決してそれは「今私の世界はこれこれこうで戦争状態です」とは言わない。否定して疑問を投げかけて、そうして自然発生したイメージを、バラバラなイメージを、曖昧なまま共有する。この選択肢は良いとか悪いとかでは無くて、そういう手法なんだ。
 第三、第四、というのは、そのどちらの一般論の両側でも無い、個人の経験や目的や元にした価値観。例えば幼少期にテヘランで育ったとか、父が母で母が父だったとか(性転換的な理由とか、家族としての役割的な理由かは自由)、生まれた時から眼が見えないとか歩けないとか、成長して大きくなる何処かのタイミングで大きな何かを得たとか失ったとか、そういうものが影響しているような価値観。こう言ったら伝わるでしょうか。
 この第三、第四、というのがたまらなく面白くて、例えばトップランナーとか情熱大陸とか、ドキュメンタリーが面白いのは、こういう選択肢の面白さを補強する効果があったりするからです。宮崎駿のドキュメンタリー見たら、やっぱりポニョ観たいもの。過去のジブリ作品の再検証とかしたくなるもの。それは、作者に興味や関心が生まれて大きく育っているからなのです。
 よしながふみさんは、どんな人なんだろう?
 面白いと思う物が人の表現したもの(漫画)なのだから、最終的に行き着くのは、作者本人を理解したいという気持ちなのかな。それは飛躍し過ぎかな。
 ともかく、面白いです。ありがとうございました。